ベトナムってどうなん?

ベトナム人と家庭を築きながらベトナムを考える

ある事件におけるベトナムの法律をめぐっての見解

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ベトナム南部にある田舎町で産気づいた妊婦がタクシーに乗って病院へ向かいました。村の診療所まで10㎞あまり、しかしようやく着いた診療所では設備が十分ではなく、ここから更に離れた病院まで移動することになりました。

しかしその妊婦は5㎞ほど走ったところで、いよいよ生まれそうという局面を迎えます。するとあろうことかタクシー運転手はこれ以上の走行を拒否し、妊婦と付き添いの家族をその場で降ろし、走り去ってしまいます。どうしようもないのでその場で出産することを余儀なくされた妊婦。その後男児が生まれ別の通りかかった車に病院まで乗せてもらうことになりました。しかし病院に着いたときにはその男児は既に息を引き取っていました。

 

この事件で争点になっているのはこの妊婦を置き去りにしたタクシードライバーが刑事責任に問われるかということについて。北部の著名な弁護士は「ベトナムの法律にある、生命が脅かされている者の救助を怠った罪で起訴できる」と主張しています。一方南部の著名な法律家は、「男児を出産したのはタクシーから降ろしたあとのことで、このケースでは生命が脅かされている対象は母親にあるとし、母親は無事だったから起訴できない」と主張しています。

 

この南部の法律家もタクシードライバーの行為は非人道的だと非難はしていますが、現行の法律では裁けない法律の穴にいると見解を述べています。

 

今回のケースは男児の死亡という点で人の生死が関わっていますが、そうではない日常の些細なことで同じように歯がゆい思いをしている人はたくさんいると思います。非人道的という言葉は究極ですが、法律では裁かれない理由で好き勝手している人は多いのものです。(もちろん今回のタクシーはそんなことを知識的に分かっていて行動に及んだとは到底思えませんが。。。)

 

こういった法律の穴が発覚することによって更に整備されていくものですが、複雑な社会ではどれだけ穴を埋めても完全にふさがるということはないんでしょう。だから人間一人一人の道徳心は大事だなぁと思わされた事件でした。

 

幼いころ誰かに悪いことをすると、

「自分がそんなことされたらどう思うの!!」

と大人からよく叱られましたが、事の真理を突いていると思います。